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この作品は年齢制限がある(若い方には不適当な)文章を多く含んでおります。
過激な性描写や不倫を描いており、猶且つ登場人物の人格を著しく変えております。
その為、このような文章をご理解いただける方のみご覧下さい。
十代のお若い方や年齢制限を感じさせる表現、キャラクター(人格・性格)変更を好まれない方はご遠慮下さい。
読後の苦情も受けません。
部屋の電話が三回鳴って切れる。
それが、合図。
もう少しすると、アイツがあたしの部屋に来る。
もうすぐ鳴る。インターフォンが鳴る。
あたしはベッドの上でその音を待っている。
何も手につかないまま膝を抱えて。
以前は違った。
こんな関係になったばかりの頃は。
電話が鳴って、インターフォンがなるまでの間、
あたしは散らかった部屋を急いで片付け、ウィスキーのビンとグラスを二個用意する。
冷凍庫に氷がある事を確認して、皿にチーズとクラッカーを載せた。
つまり・・・アイツが来る事に喜びを感じていた。
じゃあ、今は?
今はただ、部屋にやって来るアイツを受け入れるだけ。
親の目に触れない場所で、遊ぶ為だけに借りた郊外のマンション。
2LDKのマンションは、アイツと肌を重ねる為だけに借りた。
初めは週日だけ泊まり、週末から週明けにかけては家に戻った。
最近ではずっとここにいるけれど。
インターフォンが鳴った。
電話には出ず、あたしはゆっくり玄関に行き、ドアスコープから外を窺う。
大きな目玉が、私を見る。
アイツも向こうから覗いて見ているのだ。
スコープから身体が離れる。アイツはイヤラシイ感じに、微笑する。
ドアを、細く開ける。
「僕ですよ」
「分かってる」
ドアを完全に開けると、大きな身体がグッと中にあたしを押すように入ってくる。
アイツがドアを素早く閉め、鍵を掛け、チェーンを掛ける。
そして、力一杯抱き締められる。痛い程。
「痛い・・・」
「会いたかった」
「痛い。放して」
「悠理はどうです?僕に会いたかった?」
「やめ・・・」
今度は熱い口付けを受ける。痛いほど、激しい口付け。
舌も唇もキツク吸われるから、すぐに、もう、嫌になる。
その大きな身体を突き放し、あたしは背を向ける。
可憐に、少しは自分を磨くようにと言われ続けていたけれど、そんな事には昔から興味が無かった。
無理矢理連れて行かれるエステも、あたしは大嫌い。
あんまり口うるさいから、美童に簡単に自分を磨ける方法を聞いたら、男に抱かれる事だと言った。
男に抱かれると女は見違えるほど綺麗になって、肌もツルツルに美しくなるって美童が言うから、清四郎に抱かれようと思った。
清四郎はもうとっくに知らない女と結婚しちゃっているし、面倒じゃないと思った。
嫌なら即行、断るだろうし。
でも清四郎は、いいですよ、と言った。
「僕が、あなたを、綺麗にしてあげましょう」
清四郎が、そう言ったのだ。
けれどちっとも綺麗にならない。それどころか、嫌な思いばかりする。
目の下に隈ができて、肌が荒れて。
ちっとも、ちっとも、綺麗にならない。ただただ、苦しいだけ。
リビングに入ると、清四郎はすぐにあたしをソファに押し倒した。
シャワーも浴びないで。
せっかちに求めてくるから、面倒くさくって、あたしはされるままになる。
衣擦れの音もソファの軋む音も耳障りなだけ。
あたしは達しない。清四郎に抱かれてから一度も達した事がない。
独りでやる方が、気持ち良く達する事が出来る。
でも、清四郎だと達しない。
「いきました?」
清四郎は必ず事が終わるとあたしに聞く。
「全然。そんなの、分かんないよ」
「大丈夫ですよ。そのうちきっと分かります。」
悠理は、僕に抱かれる度に綺麗になりますね。
そんなの嘘だ。
「こんなの、止めたい。清四郎、ちっとも別れてくれないじゃん」
「一度結婚すると、いろいろと面倒なんですよ。紙に書くだけではすまないんですよ。
それくらい分かるでしょ、あなたにだって」
嘘だ。あたしの為に離婚する気なんて、無いくせに。
「じゃあ、こんな関係、もう止めたい。
時々ここに来て、セックスして酒飲んで、またセックスして帰ってくの。嫌だ、こんなの」
清四郎は物凄い目であたしを睨む。
「あなたが始めたいと言ったんでしょ?」
簡単な気持ちで清四郎との関係を始めた。
でも最初は何故か、嬉しくて、清四郎と会うのが、とても。
関係が深まるほど、清四郎と離れるのが嫌になった。
独り占め、したくなった。
「あたしと、家庭、どっち取る?」
冗談で聴いてみる。
あたしを取るなんて思ってないけれど、じっと答えに耳を傾ける。
清四郎は、暫く考えてから言った。
「僕は、あなたと、一緒にいたい」
更に、聴いてみる。
「あたしの為に、奥さんと別れてくれる?」
あたしを、切ない目で、見つめる。
「すぐには無理ですけれど、必ず。時間を掛けてでも」
そんなの嘘だ。分かってる。
あたしを見つめる切ない目も、その台詞も、全部演技だって知ってるんだから。
初めは騙されたけど、嘘なんだ。
コイツは嘘を言うのが、昔から旨いんだから。
あたしの上で身体を起こすと、気だるそうにソファを背に座り込んだ。
放り出したジャケットを、死んだような目で見つめてる。
「ねぇ、あたしのお腹の上、拭いてくんない?」
捲し上げられたTシャツの下で、清四郎の白濁した精液がべっとりと付いたまま。
「え?ああ」
ラタンのチェストの上にあるティッシュ箱を面倒くさそうに取り、お腹の上をグニュグニュと拭いた。
お腹の上が、ひやりとした。
「ヘンな格好。早くファスナーくらい、閉めたら?」
Yシャツを乱して、スラックスのファスナーがだらしなく開かれて、こんなの清四郎じゃない。
「悠理はいろいろとうるさいですね。ビールくらい出したらどうです?」
「だってすぐ帰るんだろ?」
「今夜は出張ですから、朝までいますよ」
「ふーん」
「嬉しくないんですか?朝まで僕といられるのに」
あたしは何も言わずに缶ビールを清四郎に投げつけると、バスルームに向かった。
バスルームから戻ると、清四郎は誰かと携帯電話で話している。
黙って聴いていると、奥さんだとすぐ分かる。
それから次に、子供と話し始める。3歳の女の子と。凄く優しい口調で。
確かその下にも、産まれてまだ数ヶ月の赤ちゃんがいるはずだ。
あたしを抱いても、奥さんもちゃんと抱けるんだ。
蔑んだ目で見ていると、通話を終えた清四郎が、あたしを振り向く。
「立ち聞きですか?お行儀が悪いですね」
「あたしの部屋で電話する方が、行儀悪いよ」
「掛かってきたんですよ。出た方が、怪しまれないでしょ?」
「ふうん」
缶ビールのプルタブを開け、ゴクゴクとビールを飲んで、無視する事にする。
こんな会話、反吐が出る。
清四郎もシャワーを終え、バスローブをだらしなく羽織って戻ってくる。
その鍛えられた上半身や、濡れてバサバサになった黒髪を見ると、今でもドキリとする。
こういう状態の時に抱かれると、達する寸前までいく。でも、達しない。
「魅録と何か、あったんですか?」
2回目を終えた後、ベッドの中で清四郎の胸に顔を埋めて微睡んでいると、急に質問された。
「何にも無いよ。なんで?」
「知ってるんですよ。最近彼と会ってるの。魅録が、僕に言いましたから」
「へぇ、なんて?」
スタンドだけの仄かな明かりの中、清四郎は目を細めてあたしを見つめる。
「俺は、悠理に夢中になりそうだって」
「・・・・・」
「最近、あなたがとても綺麗になったって。
今までは女に見えた事が無いのに、とてもステキになってきたって言ってました」
「・・・・・」
「僕が、悠理を、綺麗にしたのだと言っておきました」
「う、嘘!!」
「くっ・・・嘘ですよ。言ってません。きっと誰かに恋でもしてるんでしょって言っただけですよ」
「・・・恋なんて、してないもん。誰にも恋なんて、してない」
さっきの電話の仕返しをしてるんだ。
早く朝になればいい。こんな事の繰り返しなんて、もう嫌だ。
「お腹空いたから、コンビニ行って何か買ってくる」
あたしはスウェットを着てジーンズを穿くと、急いで部屋を出た。
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