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この作品は年齢制限がある(若い方には不適当な)文章を多く含んでおります。
過激な性描写や不倫を描いており、猶且つ登場人物の人格を著しく変えております。
その為、このような文章をご理解いただける方のみご覧下さい。
十代のお若い方や年齢制限を感じさせる表現、キャラクター(人格・性格)変更を好まれない方はご遠慮下さい。
読後の苦情も受けません。
母親と一緒にやっている仕事は、正直つまらなかった。
でも何もしないでいる訳にもいかないから、その仕事も適当な時間に切り上げてこのマンションに帰る。
何らかのパーティの時は、食べるだけ食べるとその殆どは抜け出してしまう。
清四郎との約束があっても無くても、あたしはこのマンションに帰ってくる。
突然インターフォンが鳴った。
ドキリとした。
何かの勧誘かな?宅急便なんて来る訳ないし。
リビングの受話器を無視して、足を忍ばせドアスコープを覗いてみる。
そこには清四郎が立っていた。
あたしは細くドアを開けた。
「どうしたの?」
「中に入れてくれ」
清四郎はドアを開くと素早く入り、鍵とチェーンを掛けた。
「指紋認証のドアロックにしません?」
そうすれば自由に出入りできますよ。
「どうしたの?約束してた?」
「いいえ。会議が早く終わったのと、接待が無くなったからです」
「電話くれたらいいのに」
「どうせ誰も来ないでしょう、ここには。それとも魅録が来ますか?」
意地悪そうに、微笑む。
「魅録なんて来ないもん。連絡くれたら何か買っておいたのに。何も無いよ。ビールもウィスキーも」
「何も要りませんよ。悠理がいれば、何も要りません」
「ふん!」
清四郎はあたしの腕を掴むとベッドルームに引っ張っていった。
後はいつもと同じ。
ベッドに押し倒され、Tシャツを捲し上げられ、ジーンズとショーツを脱がされる。
清四郎は、脱がない。泊まらない時は、脱がない。
スラックスを途中まで自分で下ろすだけ。
そして性急にコトを済ますと、さっさと身なりを整える。
「帰るの?」
「ええ、悪いけど、今夜は帰ります。たまには早く帰らないと、怪しまれますから」
「信用されてないんだ」
「そうでしょうね。・・・最近、何か、気付いているかも知れません・・・」
「・・・ホント?」
あたしはドキリとする。
「分かりません。だから今夜はもう、帰ります」
いつも清四郎が帰る時は、あまり見送らない。
ベッドの上でブランケットを被り、ドアが閉まる音をじっと聴いている。
でも、今夜は、玄関まで後を追った。
「また来ます」
「清四郎。もう、止めよう。あたし、もういいから。清四郎のトコ、変になる前に、もう止めよう」
「今は、その話、よしましょう」
「でも!」
「こういう話は、ゆっくり時間がある時に。土曜日の午後に来ます。
子供を連れて実家に遊びに行くそうですから」
結局、土曜日の午後、清四郎は来なかった。
ずっとリビングのソファで膝を抱えて待っていたけれど、清四郎は来なかった。
電話もメールも、来なかった。
あたしも、電話もメールもしなかった。
清四郎が来たのは、水曜日の夜、10時過ぎだった。
「この間はすみません」
あたしは缶ビールを渡すと、そのままソファに座る清四郎の前に立ちはだかった。
「別に、いいよ。予定でもできたんだろ?」
「ええ、実家に帰らなかったんですよ。だから・・・」
「ふうん。で、今日は?帰るの?泊まるの?」
「帰ります。悠理が心配だったから、ちょっと寄ってみました」
「ふうん・・・」
缶ビールをそのままテーブルの上に置き、清四郎は立ち上がった。
「悠理・・・」
肩を抱かれそうになり、スルリと抜ける。
「ごめん、今、生理中なんだ」
もちろん生理なんかじゃ、ない。
試しているんだ。
ちょっとだけ首を傾げると、覗くようにあたしの目を見た。
「生理は来週のはずでしょ?」
清四郎はそういうの、ちゃんと知ってる。
「うん、そのはずなんだけど、ちょっとくるったみたい」
「珍しいですね。悠理は生理不順になりにくい体質なのに」
「だから・・・ごめん・・・帰る?」
優しそうにあたしに微笑み掛けると、ぎゅうっと抱き締めて耳元で囁いた。
「その為だけに来てるんじゃありません。
悠理に会いたいから、来るんです。誤解しないで下さいよ」
こうして抱き締めるだけでも、充分です。
嘘ばっかり。
「怪しまれているんだろ?帰っていいよ。それとも、この間の話の続きでも、する?」
「続き?」
「もう、この関係を止めるって事だよ」
清四郎は一瞥するようにあたしを見た。
「僕はこの関係を止める気はありませんよ」
「だって・・・もしバレたらどうするの?」
「その時は、その時です。僕が良い方法を考えますから。悠理は心配しないで」
「でも・・・」
今度は優しく抱き締められた。頬と頬を合わせると、何だか安心してしまう。
その温もりに、全てを委ねてしまいたくなる。
「また連絡します」
「清四郎・・・」
唇を塞がれ、全てを奪われると、もう言葉が続かない。
「僕を信じて、僕に任せて。
最初は遊び半分で始めた関係かも知れませんが・・・もう後には引けないんです」
「・・・どういう、こと?」
「責任を取る、と言う事です」
「清四郎、あたし・・・」
「悠理だって大人でしょ?それくらい、分かりませんか?」
「・・・あたし、どうしたら・・・」
「僕の傍にいてくれるだけでいいんですよ。余計な事は考えないで」
結局その日も、清四郎はすぐに帰って行った。
どうせ捨てられるのは自分なんだから、こんな安っぽいマンション、引き払ってしまえばいいのだ。
でも、何故か出来なくて、ただじっと連絡を待っている自分が嫌だった。
2日後の金曜日の真夜中に、清四郎は来た。
3回電話が鳴って、1分もしないでインターフォンが鳴った。
「どうしたんだよ、こんな時間に」
程無く日付は、土曜日になろうとしていのに。
「ええ、ちょっと・・・」
靴を脱ぐと、清四郎はすぐにあたしの腕を掴み、ベッドルームに向かった。
「放してよ!痛いってば!」
乱暴にベッドへと押し倒された事に、ショックと同時に腹立ちも覚える。
「止めろ!まだ生理中なんだって!」
力一杯突き放すと、スーツのジャケットをベッドの端に放り投げネクタイを緩め、あたしを見ずに叫んだ。
「生理、生理って、いつになったら出来るんです!?」
「そんな言い方ってないだろ?終わるまで出来ないよ!
そんなにやりたきゃ、奥さんとやればいいじゃん!」
「何だって!?」
「あたしと付き合っている時にも、子供作ってただろ?だったら家でやりゃいいよ。
もう清四郎となんてやらない!一生やらない!!」
くっ・・・と清四郎は喉で笑った。
「家でも・・・一生出来ないんですよ」
「・・・どういう、意味、だよ」
「そういう、意味ですよ」
「バレた、の?」
ふうっと深い溜息を吐くと、ベッドに寝転がった。
「けっこう前から分かっていたって言ってました。女ってそう言うの、分かるんですって。
家庭を取るのか、あなたを取るのか、はっきりして欲しいと言われました」
「・・・で、何て言ったの?」
「・・・・・」
「何て言ったんだよ!!」
「よく考えますと、言いましたよ」
「バッカじゃないの!?あたしを捨てるって言えばいいのに!!」
清四郎は起き上がり、じっとあたしを見つめた。
「それでいいんですか?・・・あなたは、それでいいんですか?」
言葉に、詰まった。
「お願い、もう、来ないで」
「逃げるんですか?」
「ち、違うもん。だから、あたしとは終わったって言ってよ」
ジャケットを取り立ち上がると、黙って部屋を出て行く。
あたしは追いかけたい衝動にかられたけれど、ぐっと堪えた。
心臓がドキドキして、吐き気がしたけれど、追いかけちゃ行けないって思ったから。
マンションを引き払う勇気が無いまま、あたしは毎晩そこに帰った。
清四郎が来たら絶対部屋に入れちゃいけない、と心に決めた。
電話にも出ないように、メールも返信しないように。
でも結局、電話もメールも来なかった。
本当に関係が終わっちゃったんだじゃないかと、不安になった。
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