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outsider 2-4

この作品は年齢制限がある(若い方には不適当な)文章を多く含んでおります。
過激な性描写や不倫を描いており、猶且つ登場人物の人格を著しく変えております。
その為、このような文章をご理解いただける方のみご覧下さい。
十代のお若い方や年齢制限を感じさせる表現、キャラクター(人格・性格)変更を好まれない方はご遠慮下さい。
読後の苦情も受けません。






拍手[2回]






電話を取った時、その見知らぬ女の声に驚きもしなかった。

「え?誰?」

その声は清四郎の姓を名乗った。
悠理さんでしょ?と彼女は言う。
あたしは段々と震える手を必死に、もう片方の手で押さえながら受話器を耳にした。
間もなく出勤しようとして、何も考えずに急いで受話器を取ったのが馬鹿だった。
ナンバー・ディスプレイをちゃんと見れば良かったのだ。

彼女の声には初め、感情と言うものが伝わって来なかった。
ただ何故電話番号を知っているのかとか、この間はすみませんでしたとか・・・
まるで何かの勧誘の手口のようだった。

「どうするおつもりですの?」

その声に初めてドキリとした。
誰の声とも例えようが無いその声に、初めて怯えた。

「聴いてらっしゃいます?どうするおつもりですか?」

あたしは変な所で、変な自信を持って応えてしまった。

「清四郎はあたしを選んだと言ってくれました。でも、それは、違います。
アイツはあたしの所へ何て来ない。冗談じゃないけれど・・・」

息を呑む、気配。

「冗談じゃない?冗談じゃないですって?冗談じゃないのはこっちよ!」

突然の彼女の取り乱しに、喉に何かが突っ掛かるのを覚えた。

受話器の向こうで、赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。

あたしは唇を噛み締める。

「あの人は同じ事をするのよ!あなたと一緒になっても同じ事を繰り返すの。
また他の誰かに同じような事、するのよ!」

赤ちゃんが母親の傍にやって来て、泣きながら受話器を押さえるものだから、あたしの耳は痛くなった。
その、赤ちゃんの泣き声の所為で・・・あたしの耳が・・・

「あなたには、幸せになってもらいたいの・・・」

大きく息を吸い込んでは吐き、苦しそうに彼女は言った。
赤ちゃんの泣き声が、ほんのちょっと遠ざかった。

ごめんなさい、取り乱しちゃった。こんな事言うつもりじゃなかったの。
ただ冷静に、二人がどうするつもりなのか、訊きたかっただけなの。
主人、私には何も言ってくれないから・・・

あなた方の事は、結婚前から聞いておりました。
とても良いお仲間に出会えた事に感謝しておりましたから。
だから・・・そんな主人の大切なお友達のあなただからこそ、幸せになってもらいたいの。


お友達の、あたし、か。
受話器を置いた後、ポッカリした胸を抱きながらそう思った。

仲間の事を話す主人はとても輝いて見えました。嫉妬するくらい・・・



週末、泥酔した清四郎がやって来た。手にはコンビニで買った名前の無い安いウィスキーを持って。

「ちょっとぉ、どうしたのさ。何でこんなに酔っているんだよ?」
「うっ・・・酔い過ぎましたね・・・こんなになるなんて・・・ううーん・・・」

清四郎はリビングのソファにだらしなく寝そべると、すぐに寝息を立て眠ってしまった。

「ちょっと!起きてよ!こんな時間に眠っちゃぁ、朝になるってば!清四郎!」

肩を揺さぶったり、頬をぺちぺちと叩いても、起きない。
頭にきたからグラスに水をなみなみと注いで、清四郎の顔にぶっ掛けた。

「うわっ!冷たい!」

両手で顔を覆い暫く唸っていたけれど、また眠ってしまったから、あたしは厭きれて放っておく事にした。

こんな男、知らない。何とでもなればいい。

フロアリングに座り、ソファにもたれている内にあたしまで眠ってしまったようだった。
目覚めると、ソファで寝ていたはず清四郎がいない。
ぼんやりと部屋を見渡すと、乱雑に脱いだスーツがフロアリングに散らばっている。
壁の時計は午前四時。
バスルームからシャワーを使う音。
あたしは清四郎に会うのが嫌だから、そのままベッドルームへ行くとベッドに入って眠った振りをした。

「悠理?起きてるんでしょ?」

ベッドの端に座り、タオルで体を拭いながら言う。
初めのうち無視を決めていたが、清四郎が何だがブツブツうるさいのでブランケットを被ったまま口を開いた。

「昨日の朝、奥さんから電話があったよ」
「!!」
「あたしと一緒になったって同じ事繰り返すんだから、別れた方がいいって言われた」
「同じ事・・・?」
「うん、あたしと一緒になっても別の女に手を出すってさ」
「悠理もそう思うんですか?」
「絶対、なんてありえないだろ?」
「僕を信じてくれないんですか?」
「もう!分かんないよ!ワードロープにクリーニングに出したスーツがあるから、それ着てさっさと行ってくれよ!」
「悠理、僕に顔を見せて下さい」
「いや!もう清四郎なんて大ッ嫌い!」
「悠理・・・」

清四郎はブランケットごとあたしを抱き締め、愛してると言って立ちあがった。
暫くゴソゴソ音がしたけど、程無くしてベッドルームを出て、玄関のドアが閉まる風圧を感じた。

翌日は土曜日でお休みだったから、あたしは久しぶりに部屋中を掃除してみた。
このマンションは清四郎とセックスする為だけに借りた部屋だから、余り家具を置いていない。
だからとても掃除しやすい。

掃除をして洗濯をして、ベランダに自分の下着と清四郎の下着を干した。
それからリビングのソファに寝そべると、ベランダで揺れている下着を暫く眺めた。

もし清四郎と一緒になったら、こうして家事をしてアイツの帰りを待ってるのかな。


『あの人は同じ事をするのよ!あなたと一緒になっても同じ事を繰り返すの。
また他の誰かに同じような事、するのよ!』


息が詰まる。
ソファのクッションから清四郎の整髪料の匂いがした。
あたしはその匂いに安堵し、目を瞑った。

夕方になって近所のスーパーで買い物し、弁当を買ってマンションに戻る。
買い物した物を適当にしまい込むと、立ったまま弁当を食べた。
ボトルのままお茶を飲んで、さてどうしようと思う。

こんな生活、止めなくっちゃ。
以前のあたしには考えられない。何だよ、この不健康な生活。
前だったら、休みの日は太陽いっぱい浴びて、思い切り体を動かして、美味しい物をお腹いっぱい食べて、さ・・・
みんなと一緒に笑って・・・・・何だよ、今は・・・みんなバラバラで忙しくて・・・ツマンナイ・・・

シャワーを浴び、ビールを立て続けに二本飲むと、ベッドに潜り込んで朝までぐっすり眠った。


日曜日は昼過ぎまでベッドの中だった。
実際目が覚めたのもお昼近くで、それからずっとゴロゴロしている。

お腹、空いちゃった・・・
今日は久しぶりに家に帰って大好物をたくさん作ってもらって、それをお腹いっぱい食べるんだ。
それからタマとフクと一緒に庭で遊んで、プールに入ってお風呂に入って・・・柔らかいベッドでぐっすり眠ろう。

そう思い立ったら元気が出て、あたしはベッドを飛び出した。
でもすぐにインターフォンがなった・・・もちろん清四郎だった。

玄関に入った清四郎はお酒の臭いがした。

「ちょっと、ちょっとぉ!何だよ昼間っからまた酒かよ!」
「この間買ってきたウィスキー、まだあるでしょ?」
「帰れよ!あたしは今から家に行くんだから!!」

あたしの言う事なんか聞く風でもなくキッチンへ行った。
カウンターに置いたままの名も無い安っぽいそのボトルを手にすると、食器棚から適当にグラスを取り、それをなみなみと注いだ。

「そんなに注いでどうするのさ!お前ちょっと考えろよ!」

清四郎はそのままベッドルームへ向かう。
あたしは後を追ってベッドのど真ん中に座る清四郎を厭きれる様に見た。
そんなあたしの態度なんか気にせずにニヤリと笑い、グラスの半分を一気に飲み、まずいと言う。

「馬鹿!止めろ!」

清四郎の手からグラスを取りあげ、サイドテーブルに置く。
グラスの方に気を取られていたら、いきなりショートパンツを引っ張ったかと思うとショーツに手を入れられた。

「い、いや!」

グッと指を入れられる。
普段なら甘い声の一つや二つ出してやるところだが、今は腹立ちしか感じられない。

「痛い!止めろ!」

清四郎はショーツから出した指を口の中に入れ、あたしの顔を見ながらしゃぶって見せた。

「よせ!変態!!」
「変態とはナンですか?僕なりの愛情表現ですよ」

それからまたグラスを取り、最後までウィスキーを飲み干した。

結局清四郎の誘惑に負け、ベッドで交じり合い、夕方まで抱き合って眠ってしまった。


煙草の臭いで目が覚める。
誰?・・・誰も煙草なんて吸わないのに・・・
心地よい風があたしの素足に触れ、目をそちらに向けるとベランダに投げ出すように両足を伸ばし、煙草を銜える清四郎が見えた。

「清四郎、煙草吸ってる・・・」
「ん・・・?起きました?」
「いつから吸ってるの?」
「もうずっと前からですよ。魅録ほどのヘヴィスモーカーじゃあないですけどね」
「魅録、もう吸わないんだよ」
「詳しいですね」
「よせやい。やきもちやいて見せるの」

く・・・くっく、と笑う。
本当はからかってるだけなんだ、あたしの事。

「ねぇ悠理、話は違いますけどね、あなた来月の初め一週間休みを取るって言ってたでしょ?
僕も取れたんですよ。だから・・・」

嫌な予感。

「二人で何処か行きましょう。あなたが行きたい所、何処でもいいですから」
「ふうん」
「嬉しくないんですか?一週間もずっと一緒なんですよ?」
「できる訳無いじゃん!」
「それが・・・できるんですよ」

煙草を携帯用の灰皿に捨て、あたしに近付く。

「出張ですからね」
「そんな嘘、もうバレてるだろ!」
「いいんですよ。彼女は納得したんですから。ここに迎えに来ますよ」


でも結局約束したアイツとの旅行をすっぽかし、あたしは日本に程近い南の島で母ちゃんと(気が進まない)エステ旅行をした。
旅行を終えてマンションに戻ると、やつれた顔の清四郎が玄関のドアに寄り掛かって待っていた。








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